仕事を通じて身に付けた能力は? ~効果的な職業経験棚卸しの工夫~
仕事を通じて身に付けた能力は? ~効果的な職業経験棚卸しの工夫~
1 はじめに~就職支援セミナーの概要~
筆者は隣県の山形県内職安近くの公共施設において、失業者を対象にした就職支援セミナーを担当しております。
1日目は基本コースと称して2時間のセミナー。
その主な内容は雇用環境に関すること及び自己分析について解説し、一部演習を行っております。
2日目は基本コースの内容をベースに応募書類の作成と面接について解説と演習を交えた演習コースを行っております。
2 職業経験の棚卸しに悩む受講者
1日目の基本コースの最後に、過去の職業経験を振り返り、「強み」となりうる「身に付けた能力」を整理して
いただくことを狙いとした職業経験棚卸しの演習を行います。
テキストに記入例がありますが、実際の記入段階になりますと、途中でペンが止まる人、
記入例をそのまま書き写す人などが見受けられます。
受講者は、職業経験の棚卸しを重要な作業だと理解していますが、実際にどうやったらよいのかと悩んでいます。
3 職業経験の棚卸しはなぜ難しいか
1) 職業経験棚卸しの演習において、受講者は次のような反応を示します。
⑴「身に付けた能力」について、記入できない人がいる。
①それは、その当時のことを思い出せない。
②思い出しても身に付けた能力として認識しない。
⑵ 記入したとしても、その内容が抽象的であり説明困難。
2) これらの原因は次のように考えられます。
⑴ これまでに他人から認められたもののみに執着し、他人から認められなかったものは列挙の対象にならない。
⑵ その当時、本人よりも優れた人がいたり、上司またはクライアントの期待に応えられなかったことなどから
自らを過小評価しているため能力として認識しない。
⑶ 「経験したこと≒能力」を明確に認識していない。
⑷ 嫌な経験ほど思い出したくない。 → 無意識的に否定
4 職業経験の棚卸しを効果的に進める工夫
1) それでは、職業経験の棚卸を効果的に行うためにいかにすればよいか。
その方策を考えてみることにします。
⑴ 他人の評価は気にせず、自ら評価することに徹する。
その評価の方法は、経験したこと、できたことは能力として捉えた方がよい。
例えば、100点満点中50点であっても能力として捉えるべきだと考える。
つまり、「100満点に対し50点(Bの部分)不足しているので、能力はない」という考え方よりも
「100点満点中50点分(Aの部分)ができるのであるから、能力はある」と捉えた方が有利。
⑵ 当時の他人と比較せず、経験前の「自分」と経験後の「自分」を比較する。
⑶ 過去の経験で「やったこと」、「できたこと」はすべて「能力」として認識する。
⑷ ある程度時間が経過しないとやりにくい面があるが、嫌な経験ほど学ぶべきことが多いはずと
前向きに分析する。
2) 上記の方策に留意して棚卸し作業を行うと、次の効果が考えられます。
⑴ 過去の些細な経験にもかかわらず、たくさんの「やったこと」「できたこと」が浮き彫りになり、
その結果、多くの「能力」を認識することができる。
⑵ 多くの「能力」を認識すると「自分はいろいろなことができるのだ」と思い込み、その結果、自信につながる。
⑶ 自信は「私の経験・能力を是非役立てたい」という強い欲求となり、その結果意欲の向上につながる。
⑷ 高まった意欲は当然活発な就職活動という積極的な行動に発展する。
⑸ その結果、早期かつ希望する就職の実現の可能性が高まる。
5 さいごに~棚卸し作業の完成を願って~
長期間にわたる過去の職業経験を棚卸しするには短時間の演習では当然無理な話です。
そこで、セミナー終了後、自宅で引き続き棚卸し作業を行えるよう、演習実施間の受講者の反応を見て、
前述の方策からヒントとして紹介した後にセミナーを終えることにしています。
せっかく会場に足を運んだ受講者には、できる限り早期にかつ本人が希望する職に就いて欲しいものです。