就職希望内容をいかに決めたらよいか?
修親 2008.7
就職希望内容をいかに決めたらよいか?
仙台・準会員 三上久美
一 何を希望したらよいか分からない
業務管理教育の講師として、講義の合間に雑談すると何を希望したらよいか分からないという声が多く聞かれます。また、労働局主催の失業者を対象とした就職支援セミナー講師として、宮城県及び山形県を回っていますが、何を希望して良いかわからないとか希望職種をきめるためのセミナーをやって欲しいというアンケート結果が多く見受けられます。このように自分の希望をどうやって決めたらいいのか悩んでいる方が大勢います。
二 自分の希望がわからないまま就職活動
そして、自分の希望をしっかりと固めないまま、就職活動をしている方がいます。自衛隊では定年退職一年半前までに、調査票に希望を書いてもらい、それに基づき担任する地方協力本部等を決めているのがほとんどです。 ところが、一年半前という比較的早い時期のせいか、それほど本気にならないせいか、自分の希望をしっかりと決めないまま、「とりあえずの希望」を書いているようです。その結果、実際の援護の段階において、現場の援護担当者が、調査票の希望内容について本人に確認しますが、「よく考えないで書いた。」と素直に答える方がいます。そして、援護担当者としては時間をかけて本人の希望を確認しますが、その希望がなかなか決まらない。しかし、退職日は近づく。様々な求人情報の提供とアドバイスを試みても、首をタテに振らない。結局、退職後も継続援護となるケースがあるようです。決して援護担当者が手を抜いた結果とは思えません。
三 自分の希望をしっかりと決めて成功した 就職例
自分自身をしっかりと見つめ、明確に自分の希望を確立し、通常であれば応募をあきらめざるを得ない状況にもかかわらず、希望通りの就職を果たした成功者がいます。それは、四月一日付採用の市職員の募集に対し、彼は七月定年退職のため、応募はとても無理であるにもかかわらず、自分の希望を全うするため、強行突破を図ったのです。そのとき提出した応募書類は次のとおりです。
①一ヶ月かけて練習したという履歴書
②自己啓発で取得した「森林インストラクター」と印字した手作りの自分の名刺
③四月一日付採用を八月一日付採用として ご検討願いたいという申出書
以上の三点でした。面接においては「森林インストラクター」について質問攻めにあいながらも、応募の熱意を十分説明した結果、見事に八月一日付で採用されたのです。
応募者百八十人、採用人員十八人、そのうち八月一日付採用は彼のみであり、固い役所が例外を認めた事例であります。
なぜ、彼は市職員にこだわりつづけたのか?その理由は、
①大好きな山で、ボランティア活動するため、多くの自由時間が必要
②子供が独立し、妻も働き始め、住宅ロー ンもないので多くの収入は不要
③大好きな草木の手入れ、物作りなどをしたい
ということで、現在、市職員の小学校用務員として、お金をもらいながら好きなことをし、先生及び児童から喜ばれ、自由時間にはボランティア活動もし、最高に楽しいと語り、眼鏡の奥の目はきらきらと輝いていました。
実は、彼は週一回、近くのお寺で座禅をして自らを振り返っているのである。だから自分の希望をきちんと決められたのだろうと推測されます。
このように、自分の希望を明確にし、熱意をもって就職活動を行うと、希望通りの職に就くことができます。職は、与えられるものではなく自らの手で獲得するものであると言えます。
四 こうして、自分の希望を決めればいい!
簡単です。状況判断の思考過程を応用すればよいのです。まず、
①就職の目的を明らかにし、
②希望職種等の行動方針を列挙し、
③次に各行動方針の分析・評価し優先順位 をつけ、
④最も優先順位の高いものを第一希望とすればよいのです。そして、問題点への対策・処置事項も明らかにすればよいのです。この状況判断の思考過程は一般の方はあまり知りません。自衛隊にはこのように素晴らしい考え方がありますので、大いに使うべきです。 といっても、最も難しいのが、前述の②希望職種等の行動方針の列挙です。どのようにすれば列挙できるのでしょうか。
①何ができるか②何に向いているか③何をすれば面白い、楽しいのかをそれぞれ明らかにし、共通するものを見つければよいのです。その際、複数列挙して下さい。あまり多いと分析が大変なので特徴的なものをまとめて下さい。
前述の①何ができるか、これは職業能力を指します。②の何に向いているか、これは職業適性を指します。③の何が面白いか、これは価値観を指します。①と③は自分の職務キャリアの棚卸しをすれば分かります。②は職業適性検査を受ければよいのです。
あとは、思考過程を活用して下さい。妥当な結論が出ます。
定年退職日が近づいてから考えようとすると焦りますので、調査票を書く段階において、思考過程を活用して結論を出して下さい。実際、就職活動を行う段階には、その後の状況の変化があれば当然、もう一度思考過程に基づき再検討してみて下さい。その結論が就職活動の出発点になるのです。出発点は自ら決めなければなりません。当然ながら、援護担当者には決められません。決めるための情報の提供とアドバイスはするはずです。あくまでも本人が決めなければなりません。
五 希望決定で初めて本格的な就職活動開始
希望が決まれば、ようやく就職活動のスタートラインに着いたようなものです。希望職種等に関する情報収集、希望職種に関連する能力向上に専念します。就職情報活動は、知りたいことが明確であればあるほど情報が集まります。「情報主要素」と同じ働きをします。
そして、自らの不足する能力を補うため、又はさらに向上させるため、現在の職務遂行においてできることは何かを明らかにし実行するのです。例えば、お客さんを相手にする事務・営業部門に就職を希望するのであれば、お辞儀など挨拶を、これまで以上にきちんと行うこと、ビジネスマナーに沿った電話応対をすること、服装は常に端正にすることなどです。今すぐにでも実行できることばかりです。
また、資格・免許は持っているが実力がないというならば、実力をつけるための研修を受けます。さらに、必要であれば新たな資格・免許に挑戦するか、新たな能力を身につけるための講習を受講します。
このように準備を進めると適職を確保することができ、就職しても後悔しません。
読者の皆様、是非、試して下さい。自らの将来方向をしっかりと決めて就職準備に取りかかって下さい。