就職したら、最小限一年間は辞めない!
修親 2008.6
就職したら、最小限一年間は辞めない!
仙台・準会員 三上久美
一 すぐ、辞める人がいる!
私は時々、依頼を受けて援護担当者に対するセミナーの講師をさせて頂いております。 雑談でよく耳にすることがあります。それは、援護担当者が「就職援護に苦労して苦労してやっとの思いで就職が決まり、無事就職したと思いきやすぐに辞める人がいる。その直後、私たちは採用した企業におもむき丁重に頭を下げてお詫びをしますが、本当に悲しく、最もつらいですね。もっと我慢して頑張ってくれればと思います。一度このようなことがあるともう二度と自衛隊への求人はありませんね。残念ですが。」という。うなずくばかりです。援護担当者がありとあらゆる努力を重ね、採用企業との信頼関係を築き上げ、採用をお願いをしたのに、信頼を一挙に崩壊させる事態だ思います。ところが、当の本人は、そのような事情はつゆ知らず、どこ吹く風です。中には、「また別なところを紹介して下さい。」とお願いに来る場合があるとのこと。どんな事情があったとしてもなんとも残念な話だと思います。
そこで、これから退職し、再就職する皆さんに、「再就職したら、一年間は辞めず我慢する」ことを提案します。なぜ、一年間なのか、これから説明します。
二 雇用保険の適用は一年間勤務の実績が必要
まず、一年以上勤務しないと失業しても雇用保険は受給できません。ただし、特定受給資格者であれば六ヶ月以上あれば十分ですが、自己都合で離職する場合は、一年以上必要です。
そして、厚労省指定教育機関の講座を受講した場合、受講料の二十パーセントを雇用保険から支給されるという「教育訓練給付」がありますが、これも一年以上の勤務期間が必要です。
三 特別支給の老齢厚生年金も一年以上
次に、厚生年金保険についてですが、一年以上勤務すると、特別支給(六十五歳未満)の老齢厚生年金を受給できます。ただし、年齢制限があります。昭和三十六年四月一日以前生まれの男性と昭和四十一年四月一日以前生まれの女性が該当します。さらに他の要件として、公的年金の被保険者期間が二十五年以上必要ですが、定年退職者であればほぼ間違いなくその条件を満たしますので心配はありません。従いまして、わずかの年金であっても、通常の年金受給開始年齢である六十五歳までに収入があることは、とてもうれしいものです。是非とも、一年以上勤務し、この年金を受給できるよう頑張っていただきたいと思います。
四 一年頑張れば慣れる
転勤の経験のある方はおわかりだと思いますが、新たな職場に配置された場合、新たな人間関係の構築、新しい職場と職務に慣れるまで多くの時間を要します。ましてや、自衛隊勤務と異なる民間会社では商法、労働基準法、厚生年金保険法、健康保険法など多くの法令が適用されるので、自衛隊内で転勤する場合と比較して、慣れるまでかなりの時間を要します。一概には言えませんが、少なくとも一年はかけたいものです。一年勤務すると新しい人間関係もできあがり、新しい職場に慣れ、職務に慣れ、一年の業務の流れも理解できます。そうすると、自らの能力を発揮できる態勢になります。ですから、一年は謙虚に学ぶことに徹し、一年後から本当の自分の能力を発揮すると考えればよいのです。
五 途中、辞めたくなった場合、収入減・支出増を思い起こせ!
もし就職した会社を辞めたら、国民年金に加入することになり、毎月、国民年金保険料一万四千四百三十円を納付するとともに、医療保険は、国民健康保険への加入又は共済組合の任意継続組合員となる方法がありますが、現役時代と比較して、国民年金保険料も含めると少なくとも約二倍の保険料を納めることになります。無職で収入がなくなるにもかかわらず。
また、辞めた翌年の地方税も現役時代と同じくらいの額を納めなければなりません。
これらを考えますと、あと先を考えず辞めるということは、ただただ、無謀な行動と言わざるをえません。
六 当面の目標「一年は勤める」
以上のことから、自らの意思で就いた職は少なくとも一年は勤めていただきたいと思います。一年経過後、自らの本来の能力を発揮すれば、採用企業は、退職自衛官をきちんと評価し、紹介してくれた援護担当者に感謝をし、機会があればまた採用する可能性が十分あるのです。援護担当者がお詫びのための企業訪問ではなく、就職したOBの活躍ぶりを確認するとともに、企業の採用担当者との信頼関係をさらに強固にするための企業訪問でありたいものです。
援護担当者が不必要な業務を遂行しないで済むように、また、後輩の就職先確保に協力するという理由からも、これから再就職を考えている退職予定者は、是非とも、「一年間はなんとしても辞めない」で頂きたいと思います。自衛隊退職後、引き続き頑張っている多くOBが心からそう願っております。