仕事があることは幸せなことです
修親2010.12
仕事があることは幸せなことです
―究極の幸せのほとんどは仕事を通じて得られる―
仙台・準会員 三上ヒサミ
一 究極の幸せとは?
人は誰でも幸せな人生を求めています。ある住職のお話しによると究極の幸せとは次のとおりであると言う。
①愛されること
②ほめられること
③役にたつこと
④人に必要とされること
「なんだ、究極の幸せなんて当たり前のことばかりではないか? 当たり前に生活していれば幸せだってことじゃないか? だが、俺は幸せだと感じたことなど全くない! どちらかと言えば不幸じゃないかと思っているくらいだ!」などと思われた読者がおられると思います。確かに当たり前と言えば当たり前のことばかりかも知れません。しかし、これ以上の幸せはあるのでしょうか。また、これらを日々感じ取ることができれば幸せな人生を送れるのではないでしょうか。
二 仕事を通じて幸せになるはず!
さて、「①愛されること」以外の②~④はすべて、仕事をすることにより幸せを感じ取ることができます。
なぜならば、仕事を通じて、組織の目標を達成し、業績に貢献すれば、「②ほめられます」。
言葉で軽くほめられることもあるでしょうし、正式に表彰を受ける場合があります。ほめられていい気分にはなるが、少なくとも悪い気分になる人はいないでしょう。このいい気分はまさに「幸せな気分」だと思います。
また、仕事は元来、人、組織、社会の役にたつことを前提として、その役割を果たすことであるので、仕事をすることは「③役にたつこと」とイコールなのです。仕事をすることは「誰かの役」あるいは「何かの役」に立っていることなのです。これは相当意識しないと幸せを感じることはないかも知れません。従って、今、自分がやっている仕事は、「何のために」「誰のために」役立っているのか常に考えながら進める必要があるかも知れません。
さらに、その人が仕事を通じて献身的にその役割を果たすならば、当然、人・組織・社会から大いに「④必要とされます」。
常に必要とされていることを意識すれば幸せを感じます。
以上のことから、仕事をすることによりほとんどの幸せを得ることができます。
場合によっては、「①愛されること」もあり得るでしょう。そうすると仕事をすることによって究極の幸せのすべてを得られることになるかも知れません。
三 しかし、現実的には不幸が多いのでは?
ほとんどの現職の読者は、「そうは言っても幸せだと感じたことがない。むしろ、辛いことばかりで不平不満が鬱積していて、我慢しながら仕事をしているのが実情だ。」と思われるかも知れません。最悪の場合は、仕事が主な原因で自らの命を絶つ人もいます。仕事が不幸を招いていると言えます。確かに、筆者も現職中、仕事があることが幸せだと感じたことがありませんでした。
ところで、なぜ、幸せだと感じないのでしょうか。自らの反省を含めて、その原因を考えてみました。
①仕事は報酬(給料)をもらっているのだから、つらいのは当たり前という意識
②仕事よりも、相性が合わない上司、同僚、部下など人間関係に悩まされる
③仕事の量が多く、体と頭のフル回転状態が継続、もちろん休めない
④自分のやりたいことをやらせてもらえない、いやなことをやらされる
⑤いつも怒られたり、注意されたりすると自分に自信が持てない
⑥関係者からの問い合わせへの対応が多くたいへん
などと考えればきりがありません。仕事を通じてこれらのことをあまりにも強く感じとっていたかも知れません。つまり、仕事のマイナス面ばかりを見て、プラス面を見ていなかったような気がします。
しかし、ここでよくよく考えて見ましょう。
もし、そのような職業に就いていなければ、もし、そのような仕事をしていなければどうなっているのでしょうか? つまり、失業の状態だったらどうなのでしょう? 失業者から見ると仕事に就くことを夢見ています。彼らはその失業期間中、決して幸せだと思うことはないでしょう。反対に、仕事がある人は幸せ、あるいは仕事があるときは幸せだったと思うでしょう。
他に例えれば、健康な人は普段「健康はありがたいもの」と感じません。怪我、病気をして初めて健康のありがたみを感じ、健康な状態は幸せなことだと気付きます。これと同じことだと思います。
最近、アナウンサーが子育てをしている盲目の女性にインタビューしていたのをラジオで聴きました。
「あなたが今一番望むことは何ですか? 目が見えることですよね!」
「いいえ、私はこの子が健やかに育つことを望んでいます。私でも子育てができること、毎日その喜びを感じ、幸せです。健常者が当たり前にできることでも、私にとって、とても尊いものばかりで、それができたとき、やった―と大きな声を出して喜んでいます」。
アナウンサーは思わず声がつまり、しばらく次の質問をすることができませんでした。
このように、当たり前のことが実は幸せなのだと思います。
四 仕事で幸せをつかむためには
それでは、仕事を通じて幸せをつかむためにはどうしたらよいのか。
まず、前述の「②ほめられる」ためには、謙虚に仕事をする。文句は言わない。いくら仕事ができる人でも、文句ばかりを言っていては誰からもほめられません。やはり、仕事をさせていただくという気持ちが大事ではないでしょうか。
次に「③役に立つ」ためには、その仕事の目的、位置づけをよく理解した上で仕事に就くことが重要ではないかと思います。全体の目的のなかでどのような位置づけなのか、誰のためなのかを明確にして仕事をすべきではないでしょうか。
さらに「④必要とされる」ためには、信頼されなければなりません。そのためには相手の要求をしっかりと理解したうえで誠実に実行し、相手が期待する以上にその仕事を為さなければなりません。
そして、以上のことに共通して言える重要なことは、仕事をさせてもらっていることに感謝する心を持つことではないでしょうか。
ところで別の視点から「仕事をすること」について考察すると、たくさんのプラス面があることに気づきます。
(一)経済的自立
①とにかく報酬(給料、賃金)が得られる。
②その結果、生活を豊かにし経済的自立ができる。
(二)自己実現
③自分の能力を発揮でき、充実感が得られる。
④何事にも挑戦でき、その結果、能力・資質を高め、成長できる。
⑤そして、いろいろな経験を積むことができる。
(三)社会と関わって孤独を回避
⑥納税、社会保険への加入により社会人としての義務を果たし、結果的に社会に貢献。
⑦仕事をすることにより職場のルール、社会のルールを守ることになり、その結果、犯罪者とならなくてすみ、社会秩序の安定に寄与。(かと言って仕事に就いていない失業者は犯罪者だとは限りません。)
⑧仕事を通じて多くの人脈を作ることができ、人間関係を豊かにすることができる。
⑨仕事をする後ろ姿を見せることにより健全な子育てができる。
(四)健康管理
⑩毎日出勤することにより規則正しい生活を送り、身だしなみを整えるなど適度な緊張感により、健康を維持できる。
(五)生活費の節約
⑪長い時間、家庭を留守にして職場に位置するので、家庭の電気・ガス・水道など管理費を節約できる。
⑫休日には多くのお金を使うが、仕事中はお金を使うことがない。
など多くのプラス面がありますので、マイナス面ばかりに目を向けるのではなく、むしろプラス面に力点をおいてみれば、おのずと感謝の気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。「仕事があることはどんなに幸せなことか!」と思わずにいられなくなります。
もし、どうしても仕事があることが幸せだと感じない方は、自分が失業した状態を想像してみてください。失業の状態とは、自分の能力を発揮する機会は全くなく、従って誰からもほめられることはありません。ましてや人の役に立つとか必要とされるということはあり得ません。(ボランテイア活動などは別として) このような状態が毎日続くことを想像してみて下さい。特に男性にとって、何もすることがないほど苦痛なものはありません。
最後に、誰でも幸せでありたいと思います。しかし、少なくとも幸せは向こうから勝手にやってくるものではなく、自らつかみ取るものではないでしょうか。そのためには、視点をちょっと変えてみることが必要です。そうすることにより仕事が幸せにしてくれます。仕事をしている人は視点を変えることにより、当たり前のことが幸せであることに気付くはずです。
近く定年退職を迎える読者は、退職後も引き続き幸せな人生を送るため、新たな職場、新たな仕事の準備を本格的に始めてはいかがでしょうか。