自信を持つ考え方 ―人間成長の鍵―
自信を持つ考え方 ―人間成長の鍵―
はじめに
5月上旬、中部方面隊(名古屋地区に駐屯)から宮城県内に災害派遣されていた現職自衛官のKさんと雑談する機会があり、
ひょんなことから次のような話題になりました。なお、文中のMは筆者を表わします。
一 本当はパソコンができるのに?
K:私は自信がありません。
M:では、あなたに「自信」をあげます。「自信」と書いた紙をあげます。するとあなた
は「自信(の紙)」を持っていることになります。冗談でした。(笑)
ところで、お尋ねしますが、あなたはパソコンができますか?
K:できません。
M:なぜ、そう思うのですか?
K:私の妻はプログラマーです。とても、妻にはかないません。だから、できません。
M:それでは、あなたは奥さんを見て、とても奥さんのようにはできない、その能力は劣る、だからできないと
思っているのですか?
K:そうです。どうも私は他人と比較してしまうようです。
M:なるほど。それでは、もう一度お尋ねしますが、本当にパソコンはできないのですね?
K:いいえ、若干はできます。ただ、妻と比べるとできると言えないのです。
M:そうですか。しかし、どうして、プログラマーの奥さんと比べるのですか?
K:私たちはどうも他人と比較して「できる」「できない」を決めていますよね。
M:たしかにそうかも知れませんね。
ちょっといいですか。
あなたは仮にパソコンの検定試験を受けたとしますね。100点満点のうち、半分の50点を獲得したとします。
さて、あなたはこの事実をどのように受け止めますか?
K:満点の100点を獲得できなかった、あと50点不足しています。従って不十分です。
だから、パソコンはできないとなります。
M:なるほど。それでは、獲得した50点をどのように受け止めますか?
K:え、それはもちろんできることを意味すると思います。
M:それでは、あなたはパソコンができるのではないですか?
K:え、え、そうなりますね(?)
M:あなたは、なぜ、獲得した50点に注目しないのですか?
K:獲得した50点はたしかに、できるということなる、なるほど。
二 積み上げてきた努力の厚みが自信の源
M:ところでKさん、大リーグで活躍しているイチローを知っていますよね。
K:当然知っています。
M:なるほど。ちょっと話しがそれますがイチローの話しをします。
イチローを見ていると、本当に自分に自信を持った人のように見えます。数々の記録を達成しています。
彼は、試合会場が変わっても、必ずルーチンワーク(いつも同じ事を繰り返す)を行っています。
例えばご存じのとおり、バッターボックスでバットを前に出しながら左手を添えるしぐさは必ず見られます。
また、奥さん手作りのカレーライスを必ず毎日食べるそうです。いつもと同じ事をしているそうです。
そうすることによって緊張せず100%の力を発揮しているそうです。
しかし、それでもイチローは改善を図る日々の努力を惜しみなく行っているようです。
ある人は、イチローの自信の源泉は「打ち立ててきた記録の数々」にあるわけではなく、
「積み上げてきた努力の厚み」にあると言っています。
K:へー、そうなんですか?
M:ところで、今の私があるのは、自分ができることに焦点をあてて努力したからです。
私は現職時代に社会保険労務士の国家試験を受けました。
6年間に六回受験して、なんとか定年退職する前までに合格することができました。
一回目はどのような試験なのか見極めるために受験しました。とにかく、てごわい試験だと感じました。
しかし、勉強すれば点数が上がるのではと思い、翌年も受験しました。すると点数が前年度より上がりました。
当然合格にはほど遠いのですが、点数がわずか上がっただけでたいへん嬉しかった。
さらに勉強するとまた点数が上がるのではと再び受験しました。
その結果、合格ラインには届かないが、点数はさらに上がりました。
四回目は明確に合格を目指しましたが、70点満点に対しあと2点不足し、
非常に残念ながら合格できませんでした。
結局6回目にビッグチャンスがあり、無事合格できました。
恐らく、当初から合格を目指し、「合格点と得点の差だけ」を見ていれば、途中受験をあきらめ、
資格取得は失敗に終わったと思います。
K:そうだったんですか? やればできるのですね。
M:そうです、やればできるのです。
やはり、大切なことはやれたという形跡を確認し、喜ぶということではないでしょうか?
その次に「それではさらに上を目指そうか」となります。人生はその連続だと思うのです。
そして、人間的に成長していくと思います。
K:なるほど。やれたという形跡を確認するということが大切ですね。
普通はできなかった部分をいつまでもくよくよ悩みますね。悩むというか、対策をどうするかなどと考えますよね。
しかし、なんとなく疲れてきますし、やる気もなくなります。
M:できなかった部分、不十分だったところだけに目を向けるとやる気が出ませんよね。
まずは、できた部分をしっかりと確認することが大切ですね。すると自信が湧いてきます。
その上で、さらに上を目指す。これが人間成長の鍵ではないでしょうか?
三 パソコンを完璧にできる人はいない?
M:パソコンの話しに戻しますが、今度は立場を変えて、あなたはパソコン検定試験の責任者だとします。
まず、考えなければならないのは100点満点の状態をどのように設定するかですね。
それでは、100点満点というのは具体的にどのような状態なのでしょうか?
K:う―ん、考えたことがありませんね、それは。
M:そうですね、ひとことで言えば「パソコンの機能をすべて使いこなせること」ではないでしょうか。
それでは、現実的にすべての機能を使いこなせる人がいますか?
K:う―ん、いないのでは?
M:そうですよね。私もパソコンを完璧に使いこなせる人は見たことも聞いたこともありません。
あの多くの機能をすべて使いこなせる人はいないと思います。また、その必要性もないと思います。
しかし、すべての機能を使いこなさなければ「パソコンができる」と言えないのでしょうか?
反対に一部の機能を使いこなせても「パソコンができない」と言わなければならないのでしょうか?
K:そうですよね。そう考えると私にもできるってことですよね。(突然表情が明るくなる)
「できる」ですよね。なにも他人と比較することはないですよね。
四 自分の能力や価値を認める
M:そうですね。ただ、「どのくらいできるのですか?」という質問に対し、パソコンの何をどのくらいできるかと
いうことをお答えしなければなりませんよね。
このように、自分のことを振り返ると「できないと考えていたこと」、あるいは「難しいと思ってあきらめていた
こと」は決して「できないこと」ではなく、答えは「できる」ことが多いのです。
また「難しい」と思った瞬間、それはできないと思います。
しかし「できる」と思った瞬間から、じわじわと自信が湧いてきます。
だから、自分ができることをしっかりと見つめ直すことが大切ですよね。
最初のお話しに戻りますが、自信を持つためにはどうしたらよいでしょうか?
それは、自分の能力や価値をきちんと認めることから始めるべきではないでしょうか。
K:先生、今日はとてもよいお話しを聞きました。このようなお話しを他の人にも是非聞いてもらいたいですね。
本当にありがとうございました。定年まで10年もありませんが、これからの人生に是非活かします。
あとがき
最初はテーマのない雑談でしたが、話しの流れで、このような内容になりました。
Kさんの最後の言葉で投稿を決意しました。
そして私自身、Kさんとお話しすることにより多くのことに気付かされました。
Kさん、ありがとうございました。
また、遠路大阪からの災害派遣、本当にご苦労様です。ご活躍をお祈り致します。