定年後の就職にはどんな資格がいいのか?2
修親2009.2
定年後の就職にはどんな資格がいいのか?
仙台・準会員 三上ヒサミ
五 資格の種類
資格は
Ⅰ「国家資格」
Ⅱ「民間技能審査事業認定制度に基づく資格」(通称:公的資格)
Ⅲ「その他民間資格」
の三種類に分類することができます。
国家資格はさらに次の三つに分類できます。
①資格を持たないと就業できない「業務独占資格」
②特定の業務を行う事業者に設置が義務づけられている「必置資格」
③業務独占ではない国家資格で、資格がないと名乗ることができない「名称独占 資格」
①の「業務独占資格」には弁護士、医師、社会保険労務士、司法書士、柔道整復師、ボイラー技士、移動式クレーン運転士など一○二種類あります。
例えば、似たような名称で民間資格の「労務管理士」がありますが、国家資格の「社会保険労務士」が行う独占業務はできません。行うと違法となり罰則を受けます。
②の「必置資格」には宅地建物取引主任者、建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理)、衛生管理者などがあります。
③の「名称独占資格」には、情報処理技術者試験、中小企業診断士、マンション管理士、社会福祉士などがあります。従って似たようなネーミングの民間資格は違法となります。
「国家資格は」法令等に基づいて、国、地方公共団体又はそれに準ずる機関が試験を実施するものであります。
国家資格の数は、全部で二九三種類あります。
次にⅡの「民間技能審査事業認定制度に基づく資格」は一般的に「公的資格」と言われており、財団法人や社団法人など民間団体等が試験を実施するもののうち、社会的に奨励すべきものとして、国等が認定するものです。例えば、「実用英語検定」、「日本漢字能力検定」等があります。
このような資格は一三四種類あります。
Ⅲの民間資格には、民間団体及び協会が実施・認定するものでTOEFL、TOEIC、ワープロ実務検定等があります。
六 試験と資格の関係はどうなっている?
一般的に資格として認められる方法には、
①試験合格
②試験合格+登録(入会)
③実務経験+登録(入会)
④試験合格+実務経験+登録(入会)
⑤講習受講
などがあり、いずれも受験料(又は受講料)、登録料などが必要となります。
①には危険物取扱者、衛生管理者、公害防止管理者、ボイラーなどがあります。なお、公害防止管理者を取得するには資格認定講習を受講する方法もあります。
②にはマンション管理士などがあります。
③には特例として行政事務の経験があれば認められる行政書士があります。行政書士は通常、試験に合格し登録により認められる資格です。
④には社会保険労務士、宅地建物取引主任者などがあります。
⑤には良く知られているフォークリフト運転技能者の他に、厚生労働大臣登録講習会の受講により取得できる建築物環境衛生管理者(通称:ビル管理)があります。
参考までに、社会保険労務士試験の場合、受験料九千円、登録料三万円、入会金五万円、年会費は八万円、合計約十七万円となっております。(宮城県で開業する例)
行政書士の場合は、受験料七千円、登録料二.五万円、入会金十万円、年会費六万円、合計約十九万円となっております。(宮城県で開業する例)
前述のとおり、行政書士については、二十年以上の行政事務の実務経験を有する自衛官を含む公務員であれば試験を受けなくとも登録のみで取得できる特典があります。
ここで、注意すべき点は、行政書士の場合、定められた基準に従い、必ず開業することが前提となっております。従って、資格を保有していながら開業しないということは、ほとんどあり得ないことになります。
七 資格試験合格のための受験勉強方法
次の勉強方法が考えられます。
①独学
②通信講座を受講
③通学講座を受講
①の独学は、自由気ままにマイペースで、しかもお金がかかりません。ただし、時間計画、傾向と対策の分析、模擬試験の受験とじ後への反映、疑問の解消などを自ら計画し、実行するという高度の自己管理能力が必要となります。
②の受験支援機関の通信講座を受講する方法はある程度、マイペースで勉強できる反面、疑問が生じた場合、質問等に対する即答が期待できないという欠点があります。これは、私の経験上、重大な欠点であることを痛感しました。質問事項を手書きで記入した質問票を送付し、約十日以上経過した後に回答が返送されます。その時点で新たな疑問が生じており、返送された回答は余りにも多くの時間が経過しているので質問したことさえ忘れてしまっているケースが多く、それが次第にストレスに変わるのです。勉強の充実感を味わうどころかストレスが溜まってしまい、ひいては勉強意欲も低下してしまいした。従って私はこれをお勧めしません。
③の受験支援機関の通学講座を受講する方法は、お金と時間の確保に苦労しますが、講師と直接対話ができますので、疑問は即時に解消されると同時に受講仲間との切磋琢磨による能力と意欲を維持向上させることができ、合格後も「同期」として人脈が形成されます。このことは、将来においても大きな財産になる可能性を秘めております。私はこの方法をお勧めします。
八 苦労して取得した資格は評価が高い!
資格取得にはお金と労力を費やすのは当然だと考えます。簡単に手に入れたものは本人はもとより、他人からも軽んじられてしまいます。やはり、お金、時間、労力などをいかに投資したかによりその人が有する資格も評価されるようです。つまり、取得が難しい資格を相当の苦労を経て取得した場合、努力したことと投資したことに対し、それなりに評価されます。例えば仕事を継続しながら、勤務外の自由時間を利用し、ゴルフとか酒を飲む時間を削減するなど工夫を重ねて勉強時間を確保し、取得した場合、かなり評価されます。
反対に、生活に余裕があり、終日、長期間、受験校等に通学しながら勉強するという恵まれた環境において取得した場合、それなりに評価されます。
さて、あなただったらどうしますか?大変かも知れませんが今の勤務を継続しながら資格取得に挑戦することをお勧めします。きっと評価されます。
九 資格はあるが実力に自信がない!
資格を保有しているが、実力が伴わないため、自信がなく、就職に活かしたくないという人がいます。実力がないからと考えるよりも「将来の方向性」に必要であると考えるならばその資格を活かすべきだと思います。そして、心配となる部分については、もう一度勉強しておくことが大切です。
ところが、そのような余裕がない場合どうするか?私ならば、開き直るしかないと思います。
誰にでも「はじめ」はあります。「はじめ」に挑戦することが重要です。恥ずかしながら私の経験を申し上げますと、私は社会保険労務士として、一般企業の社長から仕事を依頼されたとき、「初めてですのでよく分かりませんから。」とは口が裂けても絶対に言えません。なぜならば、相手に不安を与え、その結果、次回からは仕事の依頼が来なくなります。最悪の場合、今回の依頼もキャンセルされるかも知れません。従って、私は先ずは仕事を依頼したことに対する御礼を申し上げ、自信を持った、いかにも経験者らしく落ち着いた態度で接する(実際はそうでなくとも)ようにしております。依頼の内容が初めての業務であれば、最も手っ取り早い手段として、書類の提出先である役所の窓口で書類作成のポイントなどを確認します。これにより、初めてでも何とかなるものです。これでも時間がなければ、詳しい同業者に電話で聞きます。何とかなるものです。読者の皆さんにも初めての経験はたくさんあると思います。何とか乗り越えられたのではないでしょうか?
どうしても、実力不足のため不安であるならば、実力を身につけて下さい。現職中に実力を身につけるのが得策だと思います。
駐屯地には様々な部隊、様々な部署、様々な仕事があるので、現職時代はかなり恵まれています。ボイラー、電気、衛生、会計、人事、通信、危険物、建築物など資格取得にこれほど恵まれている環境は他にないと思います。そこで、保有している資格と関連する部署やその道に詳しい人に教えて頂くのです。このためには、自ら行動を起こし、相手にお願いすることです。もちろん正式に申し込んでみる。もし、断られてもあきらめないで、あなたの熱意と行動力をもって、もう一度、心からお願いしてみてはいかがでしょうか。
次号へ続く