東日本大震災における相談ボランティア
東日本大震災における相談ボランティア
1 相談所の開設
ようやくガソリンを手に入れることができたので、知人の要請に応えるため、
3月24日から名取市役所内(仙台市の南隣15km)に相談所を設けました。
目的は東日本大震災による事業廃止の防止と事業廃止又は継続困難に伴う従業員の解雇を防ぐことでした。
(市役所1階ロビーに相談所を設定。隣の掲示板は行方不明者の安否情報)
2 被災事業でも解雇しない秘策とは
早速、宮城県名産「笹かま」を製造していた事業所が津波で全滅したので25日付けで従業員全員を解雇する
予定だったという水産加工会社社長の相談を受けました。
社長は事業再開の決意を固めていたが、すでに従業員に解雇する意向を伝えていました。
そこで、社長に解雇を思いとどめていただくため、「解雇により事業所と従業員の金銭的・精神的なつながりが
切れてしまい、従業員は生活のため新たな就職先を求める。
そうすると事業再開したとき、従業員を呼び戻すことが困難となろう。」と説明した上で、次のとおり選択肢を提示しました。
①従業員を休業扱いとする。ただし、休業手当(賃金の60%)を支払う。
②従業員を休業扱いとする。ただし、休業手当は支払わない。
①の場合、被災した事業主には休業手当支払いの負担が生ずる。これを穴埋めするため、国の緊急雇用助成金を
活用する。ただし、助成金は最高80%であり、残りの20%は事業主が負担しなければならないが、
従業員は生活費を確保でき、精神的に事業所とつながっているという安心感がある。
また、事業再開した場合、従業員を即戦力として活用できる。
②の場合、事業主としての負担は全くないが、従業員は生活費が確保できないので困る。
そこで、国が特例として打ち出した、被災者に対し離職しなくても(休業であっても)失業等給付を行うという
雇用保険を活用する。
そうすれば従業員は生活費を確保でき、かつ、従業員の地位を失うことはない。
また、事業再開した場合、即戦力として活用できる。
このように再考を促したら、社長は②の方法を検討したいと喜んで帰りました。
これで多くの従業員が路頭に迷わず済むことになります。
なお、社長の苦悩について4月8日テレビ朝日系で特集番組として全国放送され
ました。
(テレビ朝日スーパーJチャンネルの画面)
3 本当に必要な支援とは?
反対に残念ながら、事業廃止をする人、すでに解雇されて就職活動をしたいという人もたくさん相談に訪れました。
相談に来られる方には元々現状を改善しようという意欲はあります。大いに支援しなければなりません。
しかし、最も支援が必要なのは、①家もない、②仕事もない、③意欲もないという「3ない」の
被災者かも知れません。
意欲がない原因は、被災した現実を受け入れることができないからだと考えられます。
このような人にはカウンセリングが必要ではないでしょうか。
また、被災者の生活支援も大切ですが、「やりがい・生きがい・充実感を味わえる役割」、
「居場所」が見つかることをお手伝いすることが最高の復興支援ではないかと、最近考えているところです。
(名取市閖上地区の行方不明者捜索)