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労働者派遣法と高齢者は何か関係ある?

労働者派遣法と高齢者は何か関係ある?

 

1 はじめに

2007年、我が国では超高齢社会に突入して大きな話題になった。

国は、高齢者が働く機会を確保できるよう、募集・採用において年齢制限を撤廃し(2009 年改正雇用対策法)、

希望者全員を65歳まで再雇用するよう企業に義務付けた(2014年改正高年齢者雇用安定法)。

そして、最近の2度にわたる労働者派遣法の改正もその例外ではない。

そこで、高齢者と直接かかわる改正労働者派遣法の一部を紹介する。

 

2 2度にわたる労働者派遣法改正と高齢者

 1) 派遣労働の意義

そもそも労働者派遣は「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させること」であり、派遣就業は臨時的、一時的なものである(基本原則)とされている。

また、派遣先の常用雇用労働者を代替することを防止することが根本原則となっている。

そして、労働者派遣事業は、職業紹介事業などの労働力需給調整システムの一つになっている。

 2) 2012年改正と高齢者

リーマンショックの影響を受け、「派遣切り」「年越し派遣村」に象徴されたように、派遣労働者を保護しようと、2012年民主党政権下で、11項目について新設または充実させるなどの改正が行われた。

そのうち高齢者に直接かかわる事項のみを紹介する。

 ⑴ 日雇派遣の原則禁止

雇用期間30日以内の日雇派遣は原則禁止。ただし、次の2つを例外とした。

① ソフトウエア開発、機械設計、事務用機器操作など17の特定業務

② 以下に該当する人を派遣する場合

ⅰ 60歳以上の人    ⅱ 学生    ⅲ 副業の人    ⅲ 主たる生計者でない人

⑵ グループ企業派遣の8割規制

派遣会社が同一グループ企業に派遣する割合は全体の8割以下に制限した。

派遣割合の計算式は次のとおり。

派遣割合=(全派遣労働者のグループ企業での総労働時間-60歳以上の定年退職者のグループ企業での総労働時間)÷全派遣労働者の総労働時間

⑶ 離職後1年以内の人を元の勤務先に派遣することの禁止

派遣会社が離職後1年以内の人と労働契約を結び、元の勤務先に派遣することを禁止した。

ただし、60歳以上の定年退職者は禁止対象の除外。

3) 2015年改正と高齢者

派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図るため、2015年、労働者派遣法が改正された。

主な改正内容は次のとおり。

⑴ 労働者派遣事業は 「届出制または許可制」 ⇒ 「許可制」のみになった。
⑵ 派遣期間制限ルールの変更

これまで、派遣期間制限は原則1年(最長3年)とし、「政令26業務」は派遣期間制限の例外だった。今回の改正により、次のとおり事業所単位と個人単位の2本立てになった。

①派遣先事業所単位の期間制限は原則3年、手続きにより引き続き3年受け入れ可能。

②派遣労働者個人単位の期間制限は同一の組織単位に原則3年。ただし、派遣元無期雇用者、60歳以上の人などは対象外とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑶ 報告、書類管理

前項に関連して、派遣労働者が60歳以上などの場合、派遣元事業主は関係書類(事

業報告書、派遣元管理台帳、派遣先通知事項)に記載しなければならない。

 

3 さいごに

このように、改正労働者派遣法は60歳以上の高齢者を特別扱いしている。

その理由は、国が60歳以上の高齢者を「雇用の機会の確保が特に困難である者」と認識

しているからである。

「高齢者の豊かな経験とその能力を十分発揮して社会に役立てていただきたい。社会

から支えられる側でなく、社会を支える側でいてほしい。」という声が聞こえそうだ。

定年退職後も働きたい高齢の方に、選択肢の一つとしてお勧めしてもよいのではない

だろうか。

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