- ホーム
- PREP会報, 高齢社会でいかに生きるか, 就職活動
- 中高年者の就職を憂える-中高年者の就職力を高めたい-
中高年者の就職を憂える-中高年者の就職力を高めたい-
中高年者の就職を憂える
–中高年者の就職力を高めたい–
1 就職セミナー講師として感じていること
東北南部地域において活動している私は、就職活動中の老若男女が参加する就職セミナーの講師として
常々感じていることがあります。
昨今、よく若年者の就職難が報道されます。就職難にあえいでいる中高年者は比較的報道されません。
実は、家族の生活を支える立場である中高年者の場合、若年者よりもさらに深刻な問題となっているのではと
危惧しております
若年の求職者に比較すると、子供を育て上げなければならない、家のローンを完済しなければならない、
年老いた介護費用を捻出しなければならないなどの事情から再就職の必要性が高いにも関わらず、
その割には自信がなく、さらに自身の就職に対する意欲と能力を伝える知識も持ち合わせていない中高年の
求職者が多く見受けられます。
さらに、彼らはそれほど積極的に就職活動をしているとは思えません。
そして、それほど危機感を持っているとは思えないのです。
このままの状態では果たして就職できるのかと心配しなければならない中高年者があまりにも多いのです。
2 中高年者が円滑に就職できない理由
さて、中高年者が円滑に就職できない理由は、
①少ない求人、特に東北は厳しい
②社会の支援が不十分
③中高年者自身の就職力が弱い
などが考えられます。
①について
雇用情勢が非常に厳しい。特に、平成21年8月の全国有効求人倍率は0.43となり過去最悪を記録しました。
この数字は新卒者だけではなく、中高年者の就職にも大打撃を与えております。
年齢不問の求人であっても、実質的には中高年者の採用は皆無に等しいようです。
求人が増えれば問題は解決しますが、国の雇用・経済政策を待たなければなりません。
②について
本年3月末、残念ながら国の事業仕分けにより中高年者を専門に支援する組織と
業務(高年期雇用就業支援コーナー=都道府県により呼称が異なる)が廃止されました。
他に中高年者の就職を支援する公的機関には「公共職業安定所」、中高年者向きの
「キャリア交流プラザ(ただし、利用は一部の地域に限定)」、非正規労働者のための「キャリアアップ
ハローワーク」などがありますが、中高年者のためだけではありません。
また、書店には新卒者の就職を支援する書籍は山のように積まれていますが、
中高年者の就職を支援する書籍はほとんど見あたりません。
これらを総合すると、中高年者に対する支援体制は決して十分とは言えません。
③について
なぜ就職力が弱いと言えるのか? それは
・すでに年齢のハンディキャップがある(健康・体力に不安)
・元々、本格的な就職活動の経験がない
・自己分析の経験がない
・若いときのような意欲・熱意・夢がない
・住居があるため勤務地が限定される
などが考えられます。
就職セミナー講師として彼らの就職活動に寄与できるのは、この就職力を高めることではないかと考えております。
3 どうすれば、就職力を高められるか?
(1)自分の就職力を知る
まず、中高年者は自分の就職力がどれくらいあるのか自覚できません。
新卒者であれば、先生及び同級生らと接して情報交換をしますので、ある程度自らのレベルが分ります。
しかし、中高年者には再就職をしようとする同級生又は友人が身近にいません。
しかも、初めての本格的就職活動となると、何をどうすればよいやら、皆目検討がつきません。
応募書類には履歴書の他に「職務経歴書」があるということを、セミナーに参加して始めて耳にする
中高年者が見受けられます。
そこで、客観的にどれくらい就職力があるのかを知るための「就職力診断テスト」を考案しました。
(2)就職力を高める方法
中高年者の就職力を高めるためには
-
方向性を決める
-
商品力を高める
-
商品力を伝える営業力を身につける
以上3つの要素が考えられます。以下説明します。
①方向性を決める
在職中、会社の命令指示にひたすら従ってきた
中高年者には、いざ就職活動を目の前にすると「自分は何をしたいのか」「何をすればいいのか分らない」ことで
悩んでいる方が非常に多く見受けられます。
そこで、就職に対する方向性(業種・職種など)の決め方について、具体的な手順を考案して、
さらにセミナー等で実証しました。
あるセミナーのアンケートを見ると驚くべき感想が掲載されていました。
「なぜ、もっと早くこのような方法を教えてくれなかったのか? おかげで自分の将来方向がはっきりした」
②商品力を高める
自身の就職上の魅力=商品力を高めることが重要です。自らの能力を説明できる中高年者は
比較的少ないように思います。
つまり、自らの商品力について認識が不足しています。
このため、まずは自らの潜在能力に気づくこと。
そのためには「棚卸し」を是非やってみること。
さらに、将来の方向性に関連した資格取得又は能力の向上を図ることが重要であると考えております。
③営業力を身につける
応募書類又は面接において自身の商品力を100%伝える営業力を身につけなければなりません。
つまり、応募先の求めに対応して、自らの「商品力(能力・意欲等)+本気度」を必要かつ十分網羅した、
簡潔な書類の作成、そして、同様にあらゆる手段を使って自らの商品力を伝える面接の受け方を身につける
必要があります。
以上のことを確実に実行することにより、就職力を高めることができるものと考えております。
4 しかし、セミナーだけでは限界
失業者に対する就職支援セミナー、某事業所退職準備セミナーなどにおいて、就職活動の要領について情熱を
もって伝えていますが、その内容に比し利用できる時間が少なく、就職活動の基本的事項を理解していただくだけで
時間いっぱいとなり、必ずしも満足するものとは言えません。
積極的に行動する若年者はそれ程心配する必要はありませんが、中高年者の場合、セミナー後のフォローが
必要と思いますが、現実的にはそのような機会はほとんどありません。
5 そこで「本」にして伝えることにした
このように、セミナーの限界を感じていましたが、現状を少しでも改善したいため、遂に意を決して
書籍「中高年者の就職力パワーアップの秘訣」を出版することにしました。
中高年者の就職力を高める方法について、キャリア・コンサルティングの難しい理論よりも、
セミナーにおける受講者とのやりとりからの教訓を重視してまとめました。
まずは理解しやすく、そして必ず実践に結びつくような構成に努めました。
このため、手順をしっかりと示し、それぞれの段階で事例を紹介し、多くの図表を取り入れました。
なお、付録には中高年者の就職上の重要なポイントになりうる4遍の記事を収録しました。
①再就職、年齢の壁を打ち破る!
②定年退職者、適職選びのヒント
③定年後の就職にはどんな資格がいいの?
④履歴書に1ヶ月半を費やし天職に就いたMさんの事例
この書籍が就職活動中またはこれから就職しようとする中高年者の目に触れ、その就職活動におおいに役立つことを
願っております。
また、中高年者の就職力を高めて円滑な就職に結びつけるため、キャリアカウンセラー、
キャリア・コンサルタント、就職セミナー講師、公的就職支援機関などの就職支援関係者はもちろん、
各種セミナー講師、中高年者サポート機関、市町村運営図書館など、関係者の理解と協力におおいに期待している
ところであります。
(JADAの書棚にあると思います。また、希望者は全国書店、インターネット書店でどうぞ。)