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独立開業の成功は棚卸しだった

独立開業の成功は棚卸しだった

一 開業計画は容易にできず

 

筆者は、平成十九年の秋、定年退職と同時に社会保険労務士事務所を起ち上げ独立開業した。

開業に先立って、開業計画を作成した。

その主な内容は、

①いつ?

②どこで?

③誰に?

④何を提供するのか?の四点であった。

うち③と④については、容易には決められなかった。

そこで③と④をセットで検討することとし、自分自身の過去を振り返る棚卸しを始めた。

棚卸しは、経験した勤務を通じて学んだこと、やりがいを感じたことなどを詳細に列挙する作業を行った。

すると次第に答えが見え始めた。

二 開業計画の焦点は「誰に、何を提供するのか?」

 

「④何を提供するのか?」について、例えば製造業では、製品を作って消費者に提供する。

理髪店であれば、頭や顔の手入れなどのサービスを提供する。

では、社会保険労務士は何を提供するのか?

筆者は国家資格を取得したものの、社会保険労務士業務の経験や人脈はなく、自信もない。

全く見えてこない。

そこで棚卸し作業を行い、繰り返し見直した。

すると開業後に生かしたいことが明らかになり、それは筆者の得意なことでもあり、やりたいことでもあった。

具体的には次のとおり。

①教官はやりがいがある

施設学校の教官着任時、教育部長に教育予行を見てもらった際、教授計画から大きくかけ離れた内容を口走ってしまい、

大失態を演じてしまった。

猛省し、その後の教官活動の戒めとしたところ、受講者に喜んでもらえるようになり、

教官活動にとてもやりがいを感じるようになった。

当時の上司に感謝しながら、ぜひ教官の経験を生かしたいと考えた。

②退職直前に就職援護業務を経験

しかし、就職援護業務を経験したとしても、具体的に何を提供すべきか?

もう一歩踏み込んで過去を振り返り、問題点を探してみた。

定年退職者が、手厚い就職援護を受けて就職したにもかかわらず、早期離職するケースがあった。

それは、なぜなのか?

どうすれば、離職防止できるのか? 追究した。

その答えは「自分の将来を自分で決定」することに気づいた。

そこで、誰にでも後悔しない決め方として、その手法をまとめ、これを生かしたいと考えた。

(本内容は、某セミナー主催団体に採用され、講師を務めることになった。のちに書籍出版した。)

③民間人よりも早い定年退職

民間企業では六十歳定年が一般的(当時)で、自衛官は、民間企業の人たちよりも早く定年退職を経験する。

この経験を生かしたい、生かすべきだと考えた。

以上、計画をまとめると、

①いつ=定年退職直後

②どこで=仙台市(住居地)

③誰に=中高年齢者(④の内容から)

④何を提供=「後悔しない将来の決め方」及び「定年前の準備と定年後の生活」並びにこれらと連携した講師活動

とした。

これは、「当面の計画とし、三~五年以降は、社会保険労務士本業へ移行する。」という長期戦略をたてた。

三 では開業後どうなったか

 

開業した当初、セミナー主催団体の中高年齢者向けセミナー、岩手・宮城・山形労働局主催の就職支援セミナー、

自衛隊業務管理教育の「就職関連課目」、民間企業の退職準備セミナーなどの講師を務めた。

また、社会保険労務士会では、「働くとき知っておくべき基礎知識」を普及しようと、

大学・高校などへの出前講義を行っており、筆者はその先頭に立って、講師を務めている。

開業後概ね五年後には、会社設立支援、社会・労働保険の手続き、助成金手続き、

労務管理相談など社会保険労務士業に関わる業務の依頼が増加した。

四 おわりに

 

このように、自分の過去を振り返る棚卸しを行ったことにより、自分の得意なこと、やりたいことが明確になったこと、

そしてそれが実現したことを、身をもって経験した。

とても幸せなことだと思う。

体と頭が動く限り、今後も社会に役立つよう活動したい。

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