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高齢の親の問題を抱える中高年隊員のために

高齢の親の問題を抱える中高年隊員のために

はじめに

自衛隊員には自衛隊法第六十条により「職務に専念する義務」が課されています。

ところが、現実的にはこの「職務専念義務」を脅かす要因が数多く存在します。特に重責を担っている中高年隊員は

多くの要因を抱えています。

例えば、長男長女の夫婦が双方ともに、遠方に高齢の両親を抱え、その対応に苦慮している場合。

親の判断能力の低下につけ込んだ振り込め詐欺にあわないだろうか?

金銭管理などをしてあげればよいが、それができない。バリアフリーでない住居でけがをしないだろうか?

倒れたら連絡ができるのだろうか? そして、業務の兼ね合いですぐに駆けつけることができるだろうか?

などと心配の材料がたくさんあります。

さらに最悪の場合、両親の介護等を理由とした依願退職ということも考えられます。

そこで、このような問題を解決する有効な方法の一つである「成年後見制度」について紹介します。

一 成年後見制度が誕生した背景

(一)大規模かつ超高速で進展する日本の高齢化

平成十七年から平成二十二年にかけてのわずか五年間に、六十五歳以上の高齢者人口が日本最大級の都市である

横浜市の人口に匹敵する三百六十二人万人も増加し、総人口の二十三.一%、二千九百二十九万人に達しています。

この傾向はますます拍車がかかるものと推定されます。

(二)単身世帯の急増

総世帯数五千万世帯のうち、千六百万世帯が単身世帯であり、そのうち、四百五十六万帯が高齢者世帯です。

実に、女性高齢者の五人に一人が、男性高齢者の十人に一人が単身世帯であるということです。

(三)成年後見等を必要とする潜在的な対象者の増加

前項のような時代背景、社会的要因に起因して、成年後見等を必要とする潜在的な対象は、日本の総人口の一%、

百二十六万人とも、あるいは認知症高齢者約百六十九万人知的障害者約五十五万人、精神障害者約三百三万人を

合わせた五百二十七万人も存在していると言われています。

 

二 成年後見制度とは何か

(一)制度は平成十二年に誕生

平成十二年、我が国において初めて公的介護保険が誕生。

これに関連してこれまでの「禁治産者」「準禁治産者」制度に変わって、民法の改正等により、新しく

「成年後見制度」が誕生しました。

(二)本制度の主旨

精神上の障害・知的障害又は高齢等により判断能力が衰えた人あるいは判断能力を失った人を支援・保護する制度です。

その対象は「判断能力の程度・有無」によって決まります。

例えば、高齢者が認知症により判断能力を失った場合、その対象となります。

そして、その判断能力の判定要領は、医師の診断書または鑑定書に基づいて家庭裁判所が判断し、その結果により、

支援・保護の程度・内容が決まります。

(三)後見制度の種類

後見制度には法定後見と任意後見があり、詳細は次表のとおりです。

(四)法定後見制度

法定後見制度には、対象者の判断能力に応じて支援する成年後見人、保佐人、補助人があります。

参考までに成年後見人は次のような仕事をします。

三 実際の成年後見制度の利用状況

実際の成年後見制度の利用状況について、成年後見関係事件の概況(平成二十六年、最高裁判所事務総局家庭局)に

基づき紹介します。

(一)申立件数について成年後見関係事件の申立件数は約三万五千件となっており、前年比とほぼ同様です。

(二)申立人と本人との関係

申立人については、本人の「子」が最も多く全体の約三十二%を占め、次いで「市区町村長」、本人の「兄弟姉妹」

となっています。

(三)本人の男女別・年齢別割合

①本人の男女別割合は、男性が約四十%、女性が約六十%となっています。

②男性では、八十歳以上が最も多く全体の約三十四.五%を占め、次いで七十歳代の約二十四%となっています。

③女性では、八十歳以上が最も多く全体の約六十三%を占め、次いで七十歳代の約十九.三%となっています。

④本人が六十五歳以上の者は、男性では男性全体の約六十七.八%を、女性では女性全体の約八十六.三%を占めています。

(四)申立の動機

主な申立ての動機としては、預貯金等の管理・解約が最も多く、次いで、介護保険契約(施設入所等のため)と

なっています。

(五)成年後見人等と本人との関係

成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係をみますと、配偶者・親・子・兄弟姉妹及び

その他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約三十五.五%となっています。

親族以外の第三者が成年後見人等に選任されたものは、全体の約六十五%であり、親族が成年後見人等に選任された

ものを上回っています。

その内訳は、弁護士が六千九百六十一件で、対前年比で約十八.六%の増加、司法書士が八千七百十六件で、

対前年比で約十九.五%の増加、社会福祉士が三千三百八十件で、対前年比で約一.四%の増加となっています。

なお、データに表れていませんが社会保険労務士も受任しており、年々増加しています。

(筆者が社会保険労務士のため付言しました。)

(六)成年後見制度の利用者数

平成二十六年十二月末日時点における、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で

一八四,六七〇人であり、対前年比約四.六%の増加となっています。

成年後見の利用者数は十四万九千二十一人であり、対前年比約三.七%の増加となっています。

保佐の利用者数は二万五千百八十九人であり、対前年比約十%の増加となっています。

補助の利用者数は八千三百四十一人であり、対前年比約四.一%の増加となっています。

任意後見の利用者数は二千百十九人であり、対前年比約六%の増加となっています。

四 成年後見制度の利用方法

例えば、遠方に所在する両親が今は比較的元気であるが、出来る限り早期から、判断能力が不十分になった場合に

備え、「誰に」、「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ契約により決めておく「任意後見制度」を

利用することができます。

また、両親がすでに判断能力が不十分になった場合、家庭裁判所に申立て、援助者として成年後見人等が

選ばれる法定後見制度を利用することができます。

ここでは、それらの手続きの流れを紹介します。

 

(一)法定後見制度の手続き

法定後見制度の手続きの流れは次のとおりです。

(二)任意後見制度の手続き

任意後見制度の手続きは次のとおりです。

(三)費用はいくらか

法定後見開始時の家庭裁判所への申立てに必要な費用と任意後見契約公正証書の作成に必要な費用は

次表のとおりとなっています。

※一 後見開始後、成年後見人等への報酬は、本人の資産の状況に応じ、家庭裁判所が決定する。

東京家庭裁判所立川支部の場合の目安は、基本月額二万円。ただし、管理財産により増額される。

※二 公証役場における相談は無料。

(四)窓口はどこか

①相談窓口

→各市町村の地域包括支援センター、社会福祉協議会、都道府県の弁護士会・司法書士会・行政書士会・社会福祉士会・社会保険労務士会

②任意後見契約窓口→公証役場

③手続き窓口→家庭裁判所

 

さいごに

「成年後見制度」を利用すれば、遠方に居住する高齢の両親が最後まで人間らしく人生を終えられるよう間接的に

支援しながら、自衛隊員として、より職務に専念できるのではないかと思います。

防衛環境が変化するなか、現役の皆様のご活躍を心から祈念します。

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