六十歳退職公務員の民間企業への就職対策
修親2014.4・2014.6・2014.9
本稿は3回にわたって
修親へ投稿した原文で
す。時間を確保して
お読みください。
2020年9月16日掲載
以下は当時投稿した原文をほぼそのまま掲載したものである。
[六十歳退職公務員の民間企業への就職対策]
本書は、平成二十六年一月仙台市において、東北管内の国の出先機関に勤務し定年退職を迎える五十歳代の国家公務
員約八十名に対する、人事院主催の生涯設計セミナーで講演した内容を、六十歳で定年退職を迎える自衛隊の事務官
及び技官、そして一部の自衛官の方のためにアレンジしたものである。
(平成二十六年六月二日)
目次
はじめに
第一 国家公務員の定年退職後の再就職状況
第二 再就職活動前の心構え
第三 民間企業を理解する
一 中小企業の経営的な性格・特徴
二 官公庁と民間企業の相違点
三 民間企業が求めている高齢者
(一)六十歳以上の労働者の雇用を増やす理由
(二)企業が求める人材
(三)企業の面接時の最重要項目
第四 自分を理解する
一 高年齢公務員の一般的な強みと弱み
二 職務棚卸と自己分析
三 自分を取り巻く環境を理解する
四 方向性と就職条件を明確にする
第五 就職対策
一 5つの弱点への対策
二 求人側の求めに応ずる能力向上対策
三 就職活動対策
四 民間企業の文化に習熟する対策
五 民間企業就職の阻害要因の排除
第六 準備不足のまま再就職に臨む高年齢者
第七 就職への心構え
さいごに
はじめに
筆者は、本年一月、仙台市において、東北管内の国の出先機関に勤務し、定年退職を迎える五十歳代の
国家公務員約八十名に対する、人事院主催の生涯設計セミナーで、「民間企業への再就職にあたっての留意点」に
ついて講演しました。
本稿は、六十歳で定年退職を迎える事務官・技官、そして一部の自衛官の方で民間企業に再就職を検討されている
方のために、この度の講演内容を修親読者用にアレンジして紹介します。
なお、本稿で紹介する調査結果はすべて最新のものです。
第一 国家公務員の定年退職後の再就職状況
約三三〇〇人の退職公務員を対象とした人事院の「平成二十二年度退職公務員生活状況調査」結果の一部を紹介
します。なお、本調査結果で注意しなければならないのは、当時の調査対象者は六十歳から退職共済年金が支給
される年代であり、今後退職する公務員の場合、六十歳以降年金が支給されない期間が生じることです。
従って、これからは、収入を確保するための就労の必要性がさらに高まると考えられます。
一 就労状況
国の機関の再任用職員 五六・六%
国の機関の非常勤職員 十一・一%
民間企業、公益法人等 十五・八%
自営業 九・二%
ほとんどの退職公務員は国の機関に関わっていますが、二十五%の退職公務員は国の機関ではない民間企業等への
就職や自営業となっております。
二 民間企業等への再就職
事務系業務(管理職を含む) 二十六・一%
専門職(医師、教師、司法書士、税理士等) 十八・九%
技術系業務(管理職を含む) 八・六%
労務職(管理人、守衛、警備員等) 八・六%
三 勤務形態
フルタイム勤務 五十一%
パートタイム勤務 四十一%
四 仕事を探した方法
人脈(先輩、友人、知人の紹介)の活用 四十八・九%
職安、人材紹介所等 十二・七%
新聞、情報誌、ネットなど 六・六%
人脈を活用した仕事の探し方が最も多くなっています。
なお、国家公務員法第百六条の二により「職員が営利企業及び非営利法人を含むすべての法人に対して
現職及び離職者の再就職依頼・情報提供を行うことを禁止」されています。
第二 再就職活動前の心構え
一 営利を目的とした効率性が強く求められる民間企業では論理よりも行動を重んじる意識を持つことが重要です。
二 法令、官公庁、役職をバックにした仕事のやり方、部下に仕事を命じた管理者ではなく、
一従業員として率先して行動することを自覚しなければなりません。
三 一般的に給料が大幅に下がることを覚悟しなければなりません。
ある調査によると、同一民間企業内において、定年後引き続き雇用された場合、五~七割へと減額されて
います。
四 就職活動は、資格試験と異なり、ここまでやれば就職できるという合格ラインはありません。
従って、就職活動にあたってはベストを尽くす必要があります。
五 就職活動において、商品は自分であり、売り込むセールスマンも自分になります。
つまり、一人で二役を演じることになります。
自分という商品を十分理解しなければなりません。
そして、それを売り込む(応募活動)ための手段(応募書類+面接)を学ばなければなりません。
六 高年齢者の就職はタイミングが重要です。求人は若年者用に比べて多くありませんが、決して皆無では
ありません。
また、例えば、人脈を活用して求人を依頼した場合、その回答に多くの時間がかかるのが通例です。
さらに、再就職に有利な資格を取得するには、多くの時間と労力を必要になります。
従って、就職活動は努めて早期から始めるべきです。
第三 民間企業を理解する
就職活動において、「敵を知り己を知れば百戦あやうからず」という故事のとおり、
再就職先となる「民間企業」を理解し、「自分」を知ることが最も重要です。
一 中小企業の経営的な性格・特徴
中高年齢者雇用福祉協会経営学博士の望月氏は、中小企業の経営的な性格・特徴について次のとおり述べています。
(一) 会社形態をとっていても個人的色彩が強く、オーナー経営者の意向によって経営管理のすべてのことが
決まる。
(二) 経営組織は非合理的な部分が多く、あらゆる業務で合理性を追求して改善する点が多い。
(三) 特殊な技術を保有して経営されている企業は少なく、一般的に技術水準や生産性も低く、経営が不安定な
企業が多い。
(四) 資金力が小さく、また過当競争的な要素も多く、原材料の購入や製品の販売などで取引条件が
不利な場合が多い。
(五) 何らかの形で大企業に従属しているものが多く、独立性がおかされたり、しわ寄せを受けたりする場合が
多い。
二 官公庁と民間企業の相違点
まず、官公庁と民間企業の最大の相違点を挙げてみると、利益を求めない「全体の奉仕者」の公務員に対し、
「顧客への奉仕」により「利益を優先」するのが民間企業であると言われています。
例えば、知り合いの経営者は、「顧客を大事にしないと仕事なんかもらえない、商売が成り立たないよ。」
「俺(経営者)がやるべきことは、
①仕事を持ってくることと ②利益をあげることだ。」 と明言しています。
ところでお金の使い方を見ると、官公庁では事業を計画し予算を編成し事業を執行し、その成果を確認します。
民間企業では、事業を計画し実行しますが、その見返りである売上とそれに要した経費を勘案して利益を
確認します。
最終的な成果は利益であると言っても過言ではありません。
民間企業は、一般的に利益を無視した事業はできません。
なぜならば、利益は企業にとって存続に関わる重大な要因だからです。
「事業」=「利益」=「企業の存続」=「従業員の働く場」=「従業員の生活根拠」=「従業員の人生」の図式に
なります。利益と縁のない勤務をしている公務員は、このことを十分理解することが必要です。
三 民間企業が求めている高年齢者
(一) 六十歳以上の労働者の雇用を増やす理由
さて、民間企業はなぜ高年齢者を雇うのでしょうか? 厚労省「高年齢者就業実態調査」(2004年)に
よればその理由が明らかです。
1位 高年齢労働者の経験・能力を活用したい六十四・〇%
2位 時代の社会的要請である 二七・四%
3位 高年齢者に適した又は年齢に関係ない仕事がある 二十三・六%
4位 自社内で高齢化が進んでいる 二十一・五%
5位 人件費が安く抑えられる 二十・八%
(複数回答)
ただし、本調査は希望者全員を六十五歳までの雇用を義務付けた「改正高年齢者雇用安定法」が施行される
前ですので、施行後の現在において同様の調査をすれば、2位の「時代の社会的要請」がトップになるのでは
ないかと推測します。
(二) 企業が求める人材
求人情報誌などによると、募集企業が応募者に対して求めている内容は概ね「能力・経験」「意欲」「人間性」
であることが読み取れます。
高年齢定年退職の地方公務員の採用を担当する、ある企業の専務は、「能力」よりも「意欲」を優先させて
いると話していました。
その理由は、いくら経験豊富な高年齢者と言えどもその能力は十分ではないので、入社から一年かけて勉強
してもらえばよいというのが会社の姿勢。
「能力」がどんなにあっても「意欲」がないと、一年後には全く成長していなくて使い物にならない。
反対に「能力」は劣るものの「意欲」がある人の場合、一年後にはとても成長し、会社に貢献してくれたと
いう実績があるからだと述べていました。
(三) 企業の面接時の採用基準(最重要項目)
古い調査結果で恐縮ですが、その後に調査が行われていませんので最新の調査結果として紹介します。
これは、経済産業省「平成十六年度人材ニーズ調査」の一部で、企業が面接において最も重視する項目を
集計した結果です。
1位 実務経験・専門スキル二十三・九%
2位 性格・嗜好 十九・七%
3位 対人能力 十八・七%
4位 資格 十一・三%
5位 基本的業務能力 十・三%
2位の「性格・嗜好」には自立性・誠実性・向上心等が含まれます。3位の「対人能力」には他者理解力・
信頼構築力・交渉力・プレゼン力・協調性・指導育成力・情報等共有力が含まれます。
「実務経験・専門スキル」が1位になるのは当然の結果のような気がしますが、2・3位は「性格・思考」
「対人能力」となっており、採用に当たっては人柄に関することが相当重視されていることが分かります。
定年退職するまでの現職務において、意識しながら勤務すれば、2位及び3位の内容についてさらにレベル
アップを図れるのではないでしょうか。
第四 自分を理解する
次に「商品」である自分を理解することが重要です。
まずは、公務員の一般的な強みと弱みを明らかにし、次に自らの行うべき職務棚卸の方法等を説明します。
一 高年齢公務員の一般的な強みと弱み
強みは
①豊富な行政等の業務経験 (公務員全般)
②法律に精通、順法精神 (同右)
③巨大組織の一員としての自覚(同右)
④業務及び人生経験豊富 (高齢者全般)
⑤指導助言などが期待できる (同右)
弱みは
①利益追求心に乏しい (公務員全般)
②柔軟性に乏しい (同右)
③非合理性を受容困難 (同右)
④頑固で挑戦意欲が低い (高齢者全般)
⑤体力・気力の衰え (同右)
などが考えられます。
二 職務棚卸と自己分析
職務棚卸により、これまでに身に付けた資質・能力、それらの成果・業績、仕事に対する姿勢などを
明らかにします。
そして、将来の方向性を決めるヒントを得て、応募活動の際は、応募先が求めている事項を精選し、
応募書類へ記載し、面接で伝えるネタにします。
職務棚卸の方法は、自らの職務を過去に遡って振り返ります。昔のことを思い出すのに相当苦労しますが、
思い出の写真などをそばに置きながら振り返ると思い出しやすくなります。
このとき、潜在能力を掘り起こすよう留意して下さい。地道な作業ですが是非やってみて下さい。
また、自分の胸に手をあて、「好きなこと」「やりたいこと」「こだわり」などについて自問自答してみて
下さい。
すると若い頃からやりたかったことなどが思い出されます。
さらに、客観的に自分はどのような仕事に向いているのかを知るために様々な職業適性検査を受けるのも良い
方法です。
以上、職務棚卸の結果の「できること」+自問自答の「やりたいこと」+適性検査結果の「向いていること」
などを総合的に判断すれば、ある程度自らの方向性が見えてきます。
三 さらに自分を取り巻く環境を理解する
子どもの教育、住宅ローンの有無、親の介護など将来の家族、特に配偶者の状況をきちんと把握する必要が
あります。
どんなに能力と意欲があっても、配偶者をはじめとする家族の反対を無視して、勝手なことをするわけには
いきません。
自分を取り巻く環境を冷静に見つめなければなりません。
事業をおこす際、配偶者が反対すれば、事業がうまくいかないというジンクスがあります。
これは、再就職にもあてはまるのではないでしょうか。
四 方向性と就職条件を明確にする
以上のことから、業種・職種の方向性と、勤務時間、勤務場所、給料などの就職条件を明確にします。
よくミスマッチが多くて就職できない中高年齢者の話題を耳にすることがありますが、それは方向性と
就職条件を明確にしていないところに原因があるようです。
最近、方向性・就職条件を単純明快にしたことにより、すんなり就職した例があります。
特殊な例かも知れませんが、東北地域に支店営業所をもつ比較的規模の大きい外国車販売会社の元社長が
「地域に貢献できる仕事をしたい」のみで、給料、勤務地、仕事内容など就職条件のほとんどを不問にした
ところ、すぐに採用したい企業が現れ、すんなりと就職が決まったそうです。
就職先は公園を管理する会社。社会的地位の高かった元社長が、プライドを捨て、
「地域に貢献したい」という条件のみで就職活動したのが功をなしたようです。
採用した会社の話によると、社長当時の給料と比較してあまりにも安い給料だったので、
「このような給料で本当によろしいでしょうか?」と心配の声をかけたところ「まったく構いません。」と明快な
答えが返ってきたそうです。
第五 在職中から就職対策を実行する
一 五つの弱点への対策
就職活動の心構えとして、「強み」を活かして、「弱み」には対策を講ずる必要があります。
再就職成功のカギは「弱みに対し、いかに対策を講ずるか」であると言えます。
そして、対策の実行に多くの時間を要するため、現役時代から意識して自己改革するよう努力と工夫が
重要です。
ここでは、前述の「弱み①~⑤」への対策の一例を紹介します。対策の詳細は読者自ら検討していただきたいと
思います。
(一)「利益追求心に乏しい」への対策
官公庁では、事業を計画し予算を編成し、事業を執行します。
これに対し、民間企業では事業を計画・実行し、利益という成果をあげます。
利益は売上から経費を差し引いたものです。
官公庁では、経費削減の努力をしても売上をあげることはほとんどしません。
民間企業では利益を上げるため人件費も経費の一部として削減の対象としますが、
官公庁では「人件費」を「経費」の対象として削減するでしょうか?まずありえません。
そこで、利益追求の感覚的なギャップを埋めるための、現役時代にできる対策があります。
それは、自分の時給を計算してみたらいかがでしょうか。
平成二十六年のカレンダーに基づくと、一般的な総労働時間は一年間で約1852時間になります。
仮に昨年の源泉徴収票に記載されている年収を今年も確保できると仮定すると、
年収÷1852=1時間当たりの給与額=時給となり、それを、各都道府県の最低賃金と比較してみる。
ちなみに、宮城県は696円、東京都だと869円、福岡県だと712円となっています。
なお、多くのコンビニではこの最低賃金を参考にしてアルバイト店員の賃金を決めているようです。
自分の時給を計算すると、計算を間違ったのかと思うほど驚くはずです。
「本当にこんなにもらっているのか?」とか「そんなはずはない!」と思われるはずです。
このように思うこと自体、自分の人件費を経費として認識したことがない証拠です。
次に、コンビニのアルバイト店員の働き方を見て、自分の時給にふさわしい働き方をしているか自分自身を
振り返ってみて下さい。
そして、視点を変えて、もし読者がコンビニの経営者だとすれば、アルバイト店員を、読者のような時給で
雇いますか?
このようなことを考えながら定年退職までの間を勤務してみる。
これだけで、いかに利益を上げるかという意識に少しずつ変わっていくはずです。
これは、本人の意識改革につながるだけでなく、ベテラン職員の勤務態度の改善に結びつく可能性があります
ので職場の活性化に役立つと思われます。
ただし、教育訓練等の隊務は利益をあげる経済活動としてなじまない部分があり、自衛隊勤務におけるすべてを
当てはめて考えるには無理がありますので注意が必要です。
(二)「柔軟性に乏しい」への対策
一般的に公務員は法律・規則・上級者の指示を根拠として業務を遂行します。
言い換えれば、根拠のない業務は遂行しません。
さらにその延長線上に、指示がない事項、教わらない事項はやらないという習性がいつのまにか体に
染み付いています。
一方、民間企業ではいちいち教えない、根拠が明確でない。
現場で自ら判断をせざるを得ない場合があります。
従って、根拠がないからと言って手をこまねいていられません。
自ら進んで判断し、行動しなければなりません。
そのような習性を現職時代から改善することが必要です。
(三)「非合理性を受容困難」への対策
官公庁においては業務遂行要領、勤務要領等が事細かく決められています。
一方、民間企業、特に中小零細企業では、従業員の勤務の根拠となる就業規則さえ存在しない事業所、
就業規則があったとしても不十分な事業所があります。
このような事業所であっても「利益追求」「顧客第一主義」を優先します。
このため、根拠が存在しなくとも、常識に反しても非合理的なことでも受け入れざるを得ない場合があります
ので、覚悟が必要です。
(四)「頑固で挑戦意欲が低い」への対策
公務員に限らず、定年退職を迎える高年齢者は、一般的に「大ベテラン」、「生き字引」「職場の神様」などと
象徴されるように豊富な知識と経験を持っています。
高年齢者の財産は何と言っても「豊富な知識と経験である」と言っても過言ではありません。
しかし、「豊富な知識と経験」とは裏腹に、高年齢者は残念ながら、若年者と比べてあまりにも
「豊富な知識と経験」に固執し過ぎて、新しいことへの挑戦意欲が低いことは確かなようです。
民間企業への再就職を考えるならば、「豊富な知識と経験」を持っていても、現職時代に求められることと
新職場で求められる資質・能力は異なるはずなので、それに応ずるための新たな資質・能力を開発又は向上させる
挑戦が必要不可欠です。
(五)「体力・気力の衰え」への対策
一般的に人間は加齢とともに体力・気力が衰えるものです。
できないことの理由に「年だから、」という言葉をよく聞きます。
これこそ体力・気力の衰えに他ならないと思います。年をとれば、老化現象が顕著になり、病気にもなります。
しかし、社会で活躍している多くの高年齢者は、老化現象・病気と闘い、常に体力・気力をキープしています。
たとえば、プロスキーヤーの三浦雄一郎氏。
小さいころから不整脈の心臓病患者であり、六十歳代後半には高血圧・高血糖値であらゆる生活習慣病を抱えて
いたそうです。
これらと闘いながら二〇一三年五月二十三日、三度目のエベレスト登頂に成功しました。
なお、前述の経営学博士望月氏によると、高年齢者は「無病息災」ではなく「一病息災」でよいのではないかと
主張しています。
つまり、高年齢者の現実を見た場合、「無病」はあり得ない。病気の一つや二つは誰でも持っている。
それならば病気に対する対策をしっかり取りながら人生を送るべきではないかと主張しています。
まさにその通りだと思います。
また、福島県南会津出身の星丹二博士は、健康長寿日本一の長野県について、
標高の高い土地で植物を育て(当然自然環境が良い)、よく働き、生涯学習を一緒にできる仲間や
ご近所さんを持ち、多少の体調不良では病院に行かず薬も飲まず、「自分たちの健康は自分たちで守る」を
モットーに生きている人々が健康で長生きだと述べています。
二 求人側の求めに応ずる能力向上対策
まず、どのような業界・職種で働くのか?という方向性が決まれば、次の式に当てはめてみて下さい。
すなわち「求められる資質・能力」から「保有している資質・能力」を差し引くと
「不足している資質・能力」が明らかになり、この資質・能力を向上させることが必要です。
例えば、定年後の方向性として、高齢者を介護する仕事をしたいと考えているA氏の場合、
「求められる資質・能力」を予測してみましょう。
具体的な応募先を選定していない段階なので、一般的に求められる資質・能力とは何かを考えてみましょう。
介護の対象は高齢者なので、八十九歳になる筆者の親をイメージすると次のとおり考えられます。
①高齢者とのコミュニケーション能力。特に痴ほう症の高齢者
②介護の知識・技術(経験・資格を含む)
③利用者様と接するためのビジネスマナー
④高齢者に安心して乗ってもらえる自動車運転技術と免許
⑤高齢者の介護支援するための丈夫な健康体と力
⑥医療行為に立ち入らないための医療知識
⑦高齢者を尊厳する心
⑧医療介護保険を含む高齢者ライフプランの知識
他にも考えられますが、ここまでとし、次に、自らが保有する資質・能力という観点からチェックします。
すると不足するもの、レベルが低いものが明らかになるはずです。
それを補強しなければなりません。
従って場合によっては、新たに資格免許の取得が必要になるかも知れません。
その取得には多くの時間を要します。
このように、方向性をきちんと決め、検討をすればどのような資質・能力を開発・向上させればよいかの答えが
見つかります。
方向性が定まらない人は、残念ながら答えを見つけることはほぼ不可能です。
ここでも方向性を決めることが極めて重要なわけです。
三 就職活動対策
(一)方向性を決める
前述のとおり、再就職において、方向性を決めることが極めて重要です。
そのプロセスは、
①受け入れ側の民間企業の事情を理解する
②自らを理解する、
③家族等自分を取り巻く環境を勘案して、
定年後、どのような業種・職種で働くのかという方向性を決めることが肝要です。
(二)効果的な求人情報収集
人事院の「平成二十二年度退職公務員生活状況調査」結果にあったように、仕事を探した方法として
「人脈の活用」が最も多かったことがわかります。
定年退職までに時間がある人は、人脈を活用することができますので、自分の将来の方向性に関連する人脈を
部内外問わずに作ってみてはいかがでしょうか。
新卒者にとって、人脈作りとその活用は難しいものですが、高年齢者にとってはいとも簡単にできるはずですし、
それが「強み」になります。
なお、労働市場において高年齢者用の求人情報は決して多くはありませんので、応募のチャンスは極めて少ない
ことになります。
人脈を活用した人の紹介による求人情報は、それほど多くは期待できないかも知れませんが、
経験上質が高く信頼性が高いので、就職成功の確率が高くなります。
(三)応募先の選定
実際に応募活動において、どのような求人に応募したらよいか迷うものです。
しかし、応募先を決めなければなりません。
この時、就職活動を始める前に決めた方向性と就職条件を照らし合わせて選定すればよいと思います。
現在の求人情報は高年齢者でも応募できるように、法律上年齢不問となっていますが、
実際は若年者を採用する傾向があります。
そこで若年者の求人と競合しない高年齢者ならではの求人を探した方が効果的な場合があります。
もし応募先で悩んだ場合、次のヒントを参考にしてみて下さい。
①経験豊富な高年齢者でなければできないもの
例えば、先日相談を受けた現役の国交省勤務の国家公務員は、自分が住んでいるマンションの
管理組合理事長の経験と、これから取得するマンション管理士の資格を活かした仕事をしたいと
目を輝かせていました。人柄からも適職ではないかと思いました。
また、子育てで苦労された経験のある人は若い人の子育て支援、相談などが考えられます。
②高年齢者をターゲットにするもの
例えば、高齢者介護、高齢者が好むゲートボールに関わる仕事、生活習慣病に悩む高齢者を対象にした
仕事などが考えられます。相手が同年代だとコミュニケーションがとりやすいものです。
③長年の趣味を活かすもの
例えば、長年、竹細工を趣味とした人が、釣竿、尺八、箸などを製作する仕事に就く。
ゴルフが好きな人であれば、プロゴルファー、ゴルフ場勤務、ゴルフ用品の製作・販売、
ゴルフインストラクターなどが考えられます。
④地域活動の経験を活かすもの
例えば①で紹介したマンション管理組合理事長の経験を活かした仕事。
長年、地域の子供たちにボランティアで野外活動の指導をした経験を活かした公園管理、
学習施設を管理する仕事などが考えられます。
(四)主体的・積極的な応募活動
ほとんどの人は、「定年退職」に対しできれば「避けて通りたい」というのが本音だと思います。
さらに、面倒な就職活動も避けながらも、できればよい仕事に就きたいと願うものです。
就職活動を成功させるためには、その主役は本人であること、そして主体的に行動することが重要です。
自身の就職活動に協力する人がいたとしてしても、あくまでも主役は本人自身です。
本人が行動しないと周囲の協力の輪が広がりません。
人任せではなく、自分のこととして行動すること肝要です。
また、定年退職に対する消極的な姿勢と就職活動に対する主体的・積極的な姿勢を決して混同しないように
注意が必要です。
なお、一連の応募活動とは、一般的に履歴書・職務経歴書など応募書類を作成し、送付し、
書類選考後、面接を受け、礼状を送付することなどです。
就職セミナー講師活動で意外な事実に驚くのは、三十歳代・四十歳代のほとんどの求職者は履歴書等応募書類の
作成経験を持っていますが、五十歳代以上の多くの求職者はその経験が皆無ということです。
応募活動の経験がない人は、特に真剣に取り組む必要があります。
四 民間企業の習慣に習熟する対策
(一)就職先勤務環境に順応する対策
官公庁勤務と就職先の勤務環境のギャップが大きいと、就職後大きなショックを受け、それがストレスと
なります。
実際、ほぼ完全に就職条件がマッチングしたと思われたが、一か月という早期に離職した就職事例があります。
当時、その原因は分からなかったのですが、その後判明した事情から次のことが分かりました。
「新しい職場になじめなかった」ことが原因でした。
つまり、現役のとき、日常は休憩時間も含めて仕事の段取りを自分で決められる勤務でした。
ところが、就職先の民間企業では、当然ながら、決められた始業・就業・休憩の各時間どおりに
行動するようになっていて、休憩など勝手な行動をとれないという窮屈な思いから離職してしまったのです。
このようなことから、現役のときから前もって民間企業の習慣になじむ工夫が必要です。
例えば、現在の職場においてできることは、当然で、とても簡単なことですが、
決められたとおりに勤務するということです。勝手に休憩しないことです。
このように些細なことと思われることであっても、新しい職場環境では、慣れないうちはストレスとなります。
できる限り早期に、就職先の勤務環境を把握し、定年退職までに慣れておくよう努めることが重要です。
(二)ビジネスマナーの再点検
官公庁ではそれほど積極的に名刺を使う機会は少ないと思います。
ところが、民間の事業活動では、その活用場面はたくさんあります。
例えば見知らぬ人と、初対面であってもすぐにビジネスの話をしなければなりません。
このような場面では名刺が大きな役割を果たしています。
この名刺交換のマナーをもう一度チェックしてみることが重要です。
また、お辞儀についても、ビジネスマナーに沿ったお辞儀の仕方を身につけることが重要です。
これまでにそれほど意識したことがなかったお辞儀。たかがお辞儀、されどお辞儀です。
お辞儀で第一印象が決まると言っても過言ではありません。
お辞儀には一般的に十五度の「会釈」、三十度の「通常のお辞儀」、四十五度の「最敬礼」があると
言われています。
それぞれのシーンに応じて使い分けることが大切です。
謝罪する場合や依頼する場合、十五度の「会釈」をしたのではその真意は伝わりません。
少なくとも「最敬礼」の四十五度のお辞儀をしなければその真意は伝わりません。
ところで、自衛隊の礼式によると、通常の自衛隊勤務においては、四十五度のお辞儀が使われるシーンは
めったになく、ほとんどの場面で十度のお辞儀が多用されていると思います。
その結果、「お辞儀=十度のお辞儀」となり、「三十度以上のお辞儀」は身についていないのが現状では
ないでしょうか?
ところが、民間のビジネスシーンでは十度のお辞儀は、
「会釈」にもなりませんので、残念ながらほとんど通用しません。
さらに、「お辞儀なんてどうでもいいのではないか、それよりも
いかにお話しして伝えるかが大事ではないか。」という声が聞こえて
きそうですが、それもまた注意が必要です。
アメリカの心理学者メラビアンによれば、一定の条件のもと、
受け手はコミュニケーションにおいて優勢な要素の方を受け入れる傾向にあると言います。
そのメッセージ伝達に占める要素の割合は次のとおりです。
言語(つまり、話す内容)= 七%
声のトーンや口調(聴覚)=三十八%
ボディランゲージ(視覚)=五十五%
つまり、目に飛び込む「ボディランゲージ」の視覚情報と耳にはいってくる「声のトーンや口調」の聴覚情報が
合わせて九十三%と大きな割合を占めていることが分かります。
反対に話す内容の「言語」の割合が七%と非常に小さくなっています。
ボディランゲージは服装・表情・お辞儀・所作などが該当します。
もっと端的に言えば、印象は、「見た目」と「話し方」で決まると言っても過言ではありません。
「人はみかけによらない」とはこの場合の例外を表す格言と言えます。
極端な例をあげますと、笑顔で叱る、不機嫌な表情で褒める、すると受け手には「話す内容」よりも
「見た目」と「話し方」を優先してメッセージの内容が判断されます。
となるとお辞儀は服装・表情などと相まって非常に重要な要素の一つです。決しておろそかにすることは
できません。
そして、いつでもとっさに活用できるよう四十五度のお辞儀を体に覚えこませておく必要があると思います。
お辞儀は、普段の生活勤務において意識さえすれば、身につけられます。
遅くとも就職活動を始める頃にはきちんとお辞儀ができるよう日頃から練習するようお勧めします。
さらに、筆者が講師活動のため自衛隊施設を訪問したとき、午前なら「おはようございます」と
挨拶がかえってきますが、昼以降だと「こんにちわ」とか「こんばんわ」と挨拶しても、
お返しの挨拶がほとんどありません。
確かに筆者も現役時代に使ったことがありませんでした。
民間ビジネスの場面では当然使われている挨拶です。
地域の人と接するとき、意識して使ってみてはいかがでしょうか。
なお、その他にも経験豊富な定年退職者として当然身につけておかなければならないビジネスマナーは
たくさんありますので、あらためて再点検し、改善することをお勧めします。
(三)顧客第一主義
官公庁と民間企業の相違点は、「利益追求」のほかに「顧客第一主義」だと言われています。
公務員の「全体の奉仕者」に対し、民間企業では「顧客への奉仕者」と言われます。
なぜならば、顧客あっての企業、お客さんあっての企業です。
企業の事業活動では顧客に対し商品・サービスなどを提供し、その代わり報酬・代金などを受取り、
事業を継続します。
顧客を無視した事業は継続できません。
このような意識を持ち合わせている公務員は少ないのではないでしょうか?
定年退職までの間、通常の勤務において、訪問客をそれまで以上に大事にする接客意識を養ってみては
いかがでしょうか。
五 民間企業就職の阻害要因の排除
民間企業への再就職を阻害したり、再就職しても早期に離職する原因に、直接仕事にかかわりのない要因が
あります。
例えば、「頭でわかっていても、肩書とプライドを捨てきれない」「前職の癖が抜けない」などです。
これらの阻害要因を事前に排除する意識改革が必要です。
(一)前ポスト・肩書に基づく言動
本当に長年の癖は抜けないものです。
従業員十数名足らずの組み込みソフトの開発事業を営む社長が、大企業の元部長に対し
採用面接をしたそうです。
社長は「あなたは当社で何ができますか?」と尋ねたところ、
反応がありませんでした。
しばらく間をおいて同じ質問をしたところ、大企業の元部長は
ようやく重い口を開き、小さな声で
「は、はい、部長ならできます。」と答えたそうです。
皆さんどのように思いますか?
「部長」という肩書がまだとれていないようです。
また、自衛隊では命令形が基本ですが、民間企業では「です、ます」の
丁寧語、尊敬語、そして謙譲語が多用されます。
恥ずかしい話ですが、筆者が中隊長として勤務中、文系の妻から「家では自衛隊の言い方をやめて欲しい。」と
言われたことがあります。その理由は「いつも命令されているようで気分が悪いから。」でした。
当時、筆者は約八十名の隊員を指揮するため、命令口調に慣れるよう一生懸命努力していたので、
自分でもようやく中隊長らしくなったのかなあと自画自賛していました。
そのような中、妻から指摘されたときは、大きなショックを受けました。
解決策は、頭の中を勤務と家庭生活を、きちんと切り替えればよいと分かっていたのですが、
それがなかなかできません。
やむを得ず「職業上必要なことなので我慢してくれ。」と妻を説得した覚えがあります。
ところで、民間企業では命令形であっても依頼形に変えて丁寧に話します。
例えば自衛隊では「○○をせよ。」と命令します。
これに対し民間では「○○をしていただけませんか。」と依頼形に言い換えます。
定年退職直前になったら意識して改善を図ることをお勧めします。民間の人はとても敏感ですから。
(二)行動に乏しい評論家的態度
民間企業の特性上、理論よりも行動を重視する傾向があります。
「前職場のやり方はよかった、ここのやり方ではだめだ。」と言わずに、
具体的な改善案を示し行動することが重要です。
どんなに正しいことを言っても行動とその利益に結びつかなければ、空論に過ぎません。
とにかく行動し、実績を積み上げることが重要だと思います。
思い当たる方は、定年退職するまでの間にまずは行動力を高めるよう自己改革してみてはいかがでしょうか。
(三)職場一年生の意識が低い
定年退職を目前にした人は、通常、自他ともに認める大ベテランです。
周囲の人たちからは敬愛の眼差しが注がれ、頼りにされている立場です。
それが職業人生の完成の域に達している情景ではないかと思います。
ところが、定年退職し、新たに民間企業に就職するととたんに「一年生」です。
「一年生」としての望ましい姿勢は、知らないことを素直に聞いて行動することだと思います。
ところが大ベテランは教えることはあっても教わることはほとんどありません。
残念なことに新しい職場では教わらないとやっていけません。
大ベテランのプライドを捨て、入社一年生として、相手が自分の子供と同年代の先輩と言えども、
謙虚に聞くことが大切です。
事例を紹介します。
誰もが納得するような好条件で某企業に就職した定年退職自衛官が、
一週間で離職してしまったという事例があります。
その原因は、新しい職場になじめなかったというのです。
では、なぜ、なじめなかったのでしょうか?
新しい職場に順応する能力が非常に低いことが主な原因でした。
なぜ、順応する能力が低かったのでしょうか?
彼は、職場の大ベテランとして惜しまれて定年退職を迎えました。
長い間、同じ仕事、同じ人間関係など同じ職場環境でベテランの域に達していたのです。
つまり、転勤などで他の職場を経験しなかったことから「一年生」の経験が皆無に等しかったのです。
このことから、同じ職場、同じ仕事、同じ人間関係の環境で長期間勤務をしている人は、
新たな職場環境に順応する能力が低いことに気づく必要があります。
定年退職までまだ間がある人は、今からでも遅くはありません。
大ベテランというプライドを捨てて、一年生になったつもりで周囲の人に謙虚に聞く癖を身につけたら
いかがでしょうか。
第六 準備不足のまま再就職に臨む高年齢者
非常に興味深い報告書があります。それは、独立行政法人高齢・障害雇用支援機構の
「定年到達者等の就業と生活実態に関する調査研究報告書」(二〇〇二年)です。
その一部を紹介します。
それによると、「定年や退職に備えて準備したこと」は「健康やお金に関すること」だったが、
実際に退職したあとの「定年や退職に備えてやっておけばよかったこと」は前述と異なり、
数字はやや小さいが「能力開発・向上」に関することが上位を占めました。
つまり、定年退職する前に能力開発向上をやっておくべきだったという反省であり、先輩が残した貴重な教訓では
ないでしょうか。
(一)定年や退職に備えて準備したこと
①健康の維持・増進の心がけ 四十九・〇%
②定年後も楽しめる趣味などをもつ 四十四・七%
③公的年金の受給額の確認や生活設計の立案 〇・一%
④定年後の生活のための預貯金など 三十七・四%
⑤公的資格の取得 十六・三%
⑥定年後も生かせる専門的技術の習得 十五・〇%
⑦再就職について友人・知人に相談依頼 十二・六%
⑧定年後の生活設計のために講習や研修 九・〇%
⑨会社に再就職をしてくれるよう依頼 六・四%
⑩再就職のための人材銀行・人材派遣会社等に登録 五・八%
(二)定年や退職に備えてやっておけばよかったこと
①公的資格の取得 三十三・四%
②定年後も生かせる専門的技術の習得 三十・一%
③定年後の生活設計のために講習や研修 二十五・七%
④再就職のための人材銀行、人材派遣会社等に登録 十七・八%
第七 就職への心構え
いよいよ就職活動を始め、紆余曲折の後、ようやく就職が決まり、出勤の段階となります。
この間の心構えを次に列挙します。参考にして下さい。
なお、これは中高年齢者雇用福祉協会発行の「ないすらいふ情報」から引用したものです。
…一 再就職に甘さはなく、きびしいものと自覚する
…二 あらためて※3Hをチェックし、能力開発し、自己啓発に努める
…三 自分の性格の欠点を常に見直し、人間関係の改善に努める
…四 企業体質と人脈・派閥を理解しながら社長に惚れて仕事をする
…五 転職・逃避の気持ちを持たない
…六 大企業出身者の次の悪い癖を断ち切る (ここでは大企業出身者を公務員と読み替えます)
…(一)中小企業の実態を知らずになめてかかる
….(二)学歴を鼻にかける
…(三)現役時代と比較し、収入・組織・職場の雰囲気・経営方針等に不平不満をもつ
…(四)評論家的立場の言動が多く行動力に乏しい
…(五)中堅・幹部との融和ができない
…七 幅広い知識と実務的専門能力を発揮する
…八 優秀な人材には給与も地位もついてくる
…九 心身の病気の前兆に注意
…十 自分の人生は自助努力で切りひらく
※3Hとは職務能力(High Technic)、性格・人間性(Heart)、健康・活動性(Health)を言います。
さいごに
二十歳から六十歳までの四十年間働いた時間は約十万時間になると言われています。
六十歳から男性の平均寿命八十歳までの自由時間も約十万時間となります。
つまり、四十年間働いた時間と同じ時間を定年後迎えることになります。
さて、読者の皆様は六十歳以降の約十万時間をどのように使いますか?
もし、「何もしない毎日」だとしたら? 毎日が緊張感のない休日です。
どうなりますか?
すぐにボケてしまいます。
病気になります。
医療・介護のお世話になります。
果たしてそれでよいのですか?
定年退職を目の前にしている読者の皆様は、子育てが終わり、住宅ローンの返済も終了、
又は間もなく終わる頃だと思います。
そうなると精神的家計的「負担感」が非常に軽くなります。
加齢に伴う老化現象と闘わなければなりませんが、
自身で「本当にやりたいこと」を実現できる本物の人生が定年退職後の向こう側にあります。
自分の得意分野を再認識し、その能力・経験を他人のために役立て、感謝され幸せを感じる、
これは職に就くことにより実現できます。
定年退職までの時間を大切にしつつ、定年後に素晴らしい人生を迎えるよう心から祈念します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考文献
「ピンピンコロリの法則」星旦二(会津出身)
「メラビアンの法則」ウィキペディア
「新たなステップを踏み出すために」人事院給与局
「自衛隊の礼式に関する訓令」防衛省情報検索サービス
「ビジネスマナーの基本ルール」成美堂出版
「ビジネス基本ルール130」PHP研究所
「図解ビジネスマナー」高橋書店
「ないすらいふ情報」一般社団法人中高年齢者雇用福祉協会